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update:2021.02.28 担当:永一 直人
晋書巻九十六
列伝第六十六
孟昶妻周氏
人物簡介

孟昶の妻の周氏(生没年不詳)はどこの出身の人か知られていない。従妹が夫の弟と結婚した。並でない婦人だったので、孟昶は大事を語ることができた。孟昶が劉裕とともに桓玄を撃つため起兵しようとしたとき、資産を傾けて孟昶に託した。

本文

孟昶の妻の周氏。孟昶の弟の孟顗の妻もまたその従妹である。二家はともに財産が豊かであった。かつて、桓玄は平素から孟昶を重んじていたが、劉邁がそしってぶち壊しにしたので、孟昶が知ると、たいそう〔桓玄の信頼を〕失ったことを恨んだ。劉裕が〔桓玄を撃つため〕起兵しようとしたとき、孟昶とともにはかりごとを定めた。孟昶は軍の食糧として供するため、財物を散じつくしたいと思った。かれの妻は並でない婦人だったので、大事を語ることができた。そこで彼女に「劉邁がわたしを桓公にそしったため、わたしは一生落ちぶれて暮らすか、決断して賊となるかしなければならない。君は幸いにも早いうちにその縁を切ることができる。〔苦境から〕脱けだして富貴を得ることができたら、またよりをもどしても遅くはないよ」といった。周氏は「あなたの父母は堂におられ、つねならぬはかりごとを立てようと望んでおられます。どうして〔わたしごとき〕婦人が止められましょうか!もし大事が成らなければ、なんの官でみなを養っていくべきでしょうか。義とは後戻りしない決心なのです」といった。孟昶はうちひしがれたようすで長くぼうっとしていたが、起きあがった。周氏は孟昶を追って座り、「あなたのご様子を見ておりますと、わたくしが財物を得たいだけにすぎないと思われているのではありませんか」といった。そのとき彼女が生んだむすめを抱えていたので、むすめを押しやって「これも売ることができます。また何を惜しむべきでしょうか。ましてや資財など!」といった。そのまま資産を傾けてかれに給し、かれの用いるままにゆだねた。起兵のことが決行されようというとき、周氏は孟顗の妻に「きのう見た夢はとりわけ良くないもので、家の中は洗いすすぎ身を清めて不吉を除くべきでしょう。さらに赤色はよくないので、わたしはすべて選び取って七日のあいだしまいこんで隠しておくのがよいと思います」といった。孟顗の妻はこれを信じて、所有する赤いものをことごとく集めて手渡した。そこで〔周氏はそれらを〕帳(とばり)の中に置き、ひそかに自ら綿を切り取ってできた赤い衣を孟昶に与えた。こうして数十人を得ると服を着せて赤く燃えるごとくであった。〔これらのことは〕すべて周氏から出たのであるが、家人はこのことを知らなかった。

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